『新1分間リーダーシップ』を読んだので所感をメモしておきます。
読むまでの動機
動機はいくつかありまして以下が大きいです。
読んでみて
期待以上にサクッと読める良書でした。わかりやすい分類とそれぞれに対する手法が読みやすい文体で紹介されており、迷ったときの参考例としてふとしたときに思い出せるようなノウハウが学べたと感じています。*2
状況対応型リーダ
”状況対応型リーダ”の言葉自体は本書で知りましたが、メンバに対して画一的な対応を行わず、それぞれにあったやり方を行う点は漠然と「それはそうだろう」と思ったので期待せずに読み進めたところ、人だけでなく、その人が対応するタスクによってどの段階かを整理し、指導方針を本人との合意の上で変化させていく点が興味深く納得感を得ました。
個人的にもちょうど2020年の上期が終了し、初めてメンバを評価する*3責務を終えたばかりだったこともあり、組織にとって人材を評価し、査定を行う過程で最終的には形式的なランク付けをする必要があることを体感していた事も納得感につながったのでしょう。*4
社会人になってからのキャリアを振り返ると、基本的にはプレイヤとしてパフォーマンスを出していくことに取り組んできたのでこれは新鮮な体験でした。
求められる3つのスキル
前半部分で状況対応型リーダに求められる主要スキルは以下の3つだと説明があります。
- 目標設定
- 診断
- マッチング
目標設定
”始め半分”なんて言葉もありますが、本書でも目標の重要性が語られており、それは”SMART”という語呂合わせで紹介されています。 詳細は省きますが項目だけ並べると以下の通りで、これらを満たした目標を設定するように心がけるべしとありました。
- Specific - 具体性
- Motivating - 動機付け
- Attainable - 達成可能性
- Relevant - 関連性
- Trackable - 追跡可能性
字面だけだと分かりづらかったのが”関連性”で、これは会社、チーム、他のタスクとの関連性のことで、良い効果があるか、優先度は高いかを意識しましょうと理解しました。
診断
SMARTで適切な目標を設定した後は、診断してマッチングをしながらコーチングをするフェーズです。
診断では以下の2つの軸から、
- 技術
- 意欲
以下の4つのレベルに診断し、
- 技能(低) 、意欲(高)
- 技能(低から中)、意欲(低)
- 技能(中から高い)、意欲(不安定)
- 技能(高)、意欲(高)
それぞれに合ったコーチング(付き合い方)でマッチングさせていくとありました。これは一見するとシンプルに分割しすぎているようにも感じましたが、以下のように考えるとある程度納得できました。
- 「やっていき」
- 「力ついてくるけど飽きてくる」
- 「”完全に理解した!”と”何もわからん”」
- 「チョットデキル」
マッチング(付き合い方)
診断した後は、フェーズにあった付き合い方をすべしとのことで、4つのやり方を柔軟に使い分けましょうとあります。*5
- 指示型
- コーチ型
- 支援型
- 委任型
本書ではそれぞれの型について登場人物を変えながらわかりやすい説明がされており、考え方として参考になりました。
プレイヤとしての自分は基本的に”委任型”が最も好きなやり方で、困ったときだけ”コーチ型” or "支援型"を相手に感謝しつつも申し訳ない気持ちで受け入れるようなところがありましたが、トータルで考えると初速を他者からの指導で加速するのは総合的にメリットが大きいことを体感することが多いです。*6
さて、自分を振り返るとシンプルじゃない感
ここまでざっと書いてきたように、本の中では箇条書きにできてしまうようなシンプルな分類やノウハウが紹介されており、それらはわかりやすくて参考にはなりましたが、自分で消化して多少なりとも良い方向に持って行くかを検討すると「これは大変だな」となります。
みんな基本的に自分より強い
素晴らしいことに、自分より優れてるスキルを持った人ばかりなので全部”委任型”でいいじゃんとなりがち問題があります。
しかしこれは思考放棄だと思い直して、対応するフェーズやタスクが求めるスキルによっては意識的に”委任型”だけではないやり方を模索したいです。
目標設定むずかしい
書内の”SMARTな目標設定”については納得感を持ったものの、実際の組織としての目標設定とは文脈が異なる部分もあって、SMARTエッセンスを適用して考えると結構足りてない部分がすでにありました。
一番難しいと感じているのが’T’の”Trackable(追跡可能性)”で、目標に対して適切な計測指標を設定して、進捗を可視化するのは、目標の質にもよりますが難しい部分もあるなと。
ただ、これはそのままSREの文脈でいうSLI/SLOの話でもあって、それを専門とするチームでもあるはずですから、そんなチームの目標のTrackableがゆるふわなのは苦々しいのでチームで少しずつ修正していく。
まとめ
冒頭にも書いた通りで、シンプルでわかりやすいエッセンスが詰まった良書でした。
読んだだけでは何もならず、日々のなかで自分なりの行動につなげていく必要があるのと、杓子定規に頭でっかちになるまいという自戒も味わえた点で価値ある読書体験になったと言えます。よっておすすめです!
余談:今一つふに落ちないエピソード
”委任型”についての解説でちょっとしたエピソードが紹介されているのですが、この落ちの面白さがわからずにもやっとしました。
とある家庭(両親と幼い娘さん)の話で、母親が家に仕事を持ち帰って夜遅くまで働いているのをみて娘が「お母さんをできない子のグループにすればよいのに」と父親に言うのが面白ポイントで、さらに「だったら、もっと委任すれば良いのに」がより良い回答として落ちとして提示されます。
ここの解釈は以下だと考えていますが、確信には至っていません(どうでもいいですね...)*7
- 母親は、忙しいのだからもっと他のメンバに委任するべきだった?
- 母親を「できない子グループにいれる」発言をする娘さんの大人びた発言が面白ポイント?